文化財学科のトピックス
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2026.07.08
経典の調査方法を実物を使って学ぶ(美術史実習その2)
奈良大学文化財学科では、3年生から考古学・保存科学・美術史のそれぞれの実習を選んで受講します。美術史実習では、寺社や博物館・美術館での作品鑑賞とともに、実際の資料の取扱や調査方法について学んでいます。
7月7日の実習では、受講生約40人が大般若経の調査を行いました。大般若経は600巻からなる膨大な量の経典で、多大な功徳をもたらし、あらゆる災難を除く絶大なる威力を持つと信じられてきました。日本中、津々浦々の寺や神社に納められ、主に転読(折本を空中でパラパラと巻頭から巻末までを流れるように広げて畳む読み方)という方法で使用されました。
調査する大般若経は、今年の2月に個人の方から奈良大学に寄贈を受けたもので、もとは法隆寺の門前、斑鳩町興留地区の牛頭天王社(現・素戔嗚尊神社)に伝来したものです。栗本清三郎光寛という人物が、江戸時代の享保3年(1718)から寛延3年(1750)まで、32年かけて一人で書写した「一筆経」で、完成の際には法隆寺舎利殿にて阿弥陀院千懐(法隆寺一臈)が導師を務めて開眼供養が行われています(詳細は大河内智之「興留栗本家所蔵大般若経」〔奈良県地域創造部編集発行『令和7年度奈良県内古文書所在確認調査報告書』2026年〕を参照)。
実習では、大般若経の説明とともに、経典の調書の取り方について学びました。外題や首題、尾題、紙の種類など、最初は恐る恐る折本を手にしながら学生たちは丁寧に記録していきます。そして大変なのが法量の計測です。経典はたくさんの紙を貼り継いで一巻をなしています。一紙ごとの幅を計って記録し、20~30紙の一巻全てを測ったら、数字を足して全長を把握します。続いて奥書の記録です。経典には書写時期や書写者の名前、書写する理由など、いろいろな情報が奥書に記されていることがあります。この大般若経には、ほとんどの巻に奥書が残されています。旧字で書かれた文字に苦労しながら、間違いないように記録してもらいました。調査のデータはこれから未来まで残り続けます。大きな責任を感じながらの調査体験となりました。
この大般若経は、今後学生・院生とともに調査を進め、今年度末に奈良大学博物館にて展示公開を行い、早期の情報共有化を図る予定です。ご期待ください。
【奈良大学文学部文化財学科のモットーは「現地現物主義」です】


