地理学科のトピックス
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2025.05.31
大巡検の実施報告(羽佐田ゼミ):栃木県宇都宮市・日光市で実施しました。
地理学科では、3年次に「大巡検」(ゼミ単位での3泊4日程度の宿泊あり巡検)を行います。「巡検(エクスカーション)」とは、一般にいうフィールドワークのことで、教育的・学術的な野外調査を意味する言葉です。実際に現地を訪れて学ぶことができる巡検は地理学の醍醐味であり、この「大巡検」は地理学科にとって非常に重要な行事の一つです。
今年度の「大巡検」一番手として、羽佐田紘大講師のゼミ7名(教員1名、学生6名)で5月27日(火)~30日(金)に栃木県宇都宮市・日光市にて実施してきました。
大巡検の仕方はゼミによってさまざまです(個々での調査、団体での見学)。羽佐田ゼミでは、毎年、グループ単位で事前に巡検ルートを計画した上で、全員で見学地を巡ります。学生は計画だけでなく、見学地での解説も担当します。
<初日>集合/宇都宮市
宇都宮市内では、特徴的な石が利用された構造物やモニュメントなどを多数目にします。写真は宇都宮駅前の餃子像で、宇都宮市大谷町付近で産出される「大谷石」(凝灰岩)という耐火性・防湿性に優れた石材からできています。
まずは、大谷石の地下採掘場跡である大谷資料館を見学しました。坑内温度は9℃と寒く、上着を忘れた学生はやせ我慢をしていました。幻想的な雰囲気になっていて、さまざまな撮影やイベントにも使われているそうです。映画やテレビドラマのワンシーン、アーティストのMVなどで見たことがある人もいるのではないでしょうか。
その後、大谷寺(大谷観音)や平和観音を巡り、凝灰岩に直接彫られた像を間近で見ました。巨大な平和観音は圧巻でした。大谷寺では縄文最古(11,000年前)の人骨も観察しました。
<2日目>宇都宮市・日光市(学生グループによる計画)
最初に、長岡百穴古墳に寄りました。南向き斜面の凝灰岩に掘られた多数の横穴はなかなかのインパクトでした。百穴というものの100の穴があるわけではなく、古墳時代末期につくられたとされる横穴墓が52基確認されています。横穴奥の壁には室町~江戸時代作の菩薩などが彫られています。
中禅寺湖は、霧(視程1 km未満)が深く、観光サイトのような景色を見ることはできませんでした。男体山を拝むことも叶わず、湖畔にいたはずの釣り人すら見えなくなるくらいでした。
華厳の滝も霧でまったく見えず、ゴーゴー流れる音だけを体感しました。一応音のする方を撮影してみたものの、本当に滝かあるかどうかわからない写真になってしまいました。また、途中で野生の猿にも出くわしました。すぐ横に来たのですが、目を合わせると襲われる可能性があったため、十分離れてから撮影しました。
宇都宮市内に戻る途中、日光東照宮にも寄りました。定番の陽明門や三猿、眠り猫だけでなく、東照宮近くを流れる稲荷川の砂防堰堤も確認しました。
最後に、日光街道の杉並木を見ながら宇都宮市内へと帰ってきました。ただし、担当教員運転中のため、杉並木を撮影することはできませんでした。
<3日目>宇都宮市(学生グループによる計画)
周辺の自然環境や土地利用を確認するため、まずは栃木県庁舎の展望ロビーから眺望しました。無料でこの景色を見られるのは大変ありがたかったです。
宇都宮という地名の由来となったとの説(「下野国一之宮」のイチノミヤが訛ってウツノミヤに)がある、宇都宮二荒山神社を参拝しました。腹ごしらえ(もちろん餃子)の後はオリオン通り商店街を歩き、中心街の様子だけでなく、わずかな高低差や小河川の整備状況なども注意深く観察しました。
その後は、栃木県立博物館に移動し、栃木県の自然・人文に関するさまざまな知見を深めました。展示がかなり充実していて、2時間でも足りないくらいでした。特に、岩石標本の充実度には驚かされました。
最後に、宇都宮城址公園を訪れ、城の立地と地形との関係を確認しました。
<4日目>宇都宮市/解散
2023年に国内の路面電車として75年ぶりに新規開業した「宇都宮ライトレール(ライトライン)」に乗り、飛山城跡まで行きました。ライトラインの各停留所のベンチにも大谷石が使われていました。雨降る中でしたが、飛山城跡公園からは鬼怒川や宇都宮市街を展望できました。住居を囲む立派な屋敷林も北関東らしい景色でした。
大巡検ではその地域の食文化を堪能することも重要です。結局、担当教員は4日間のうち5食を餃子にしてしまいました。複数店舗の食べ比べが可能なお店があったおかげで、14店舗の味の違いを把握することができました。
現在、学生は大巡検での成果をポスターにまとめる作業を行っています。ポスターはA棟1階の廊下に掲示予定です。お越しの際はぜひ立ち寄ってみてください。