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2024.08.20
【史学科トピックス】足立広明先生(西洋史)がイギリス・オックスフォード大学エグザムスクールで開催された第19回国際教父学会にて研究発表をされました
足立先生(西洋古代史、古代末期、初期ビザンツ史)ご自身による研究発表記をご紹介します。
第19回国際教父学会研究発表記 足立広明
本年8月5日~9日にオックスフォード大学エグザムスクールで開催された第19回国際教父学会(XIX. International Conference on Patristic Studies, Oxford, 5.-9. August 2024)で研究発表してきました。
国際教父学会というのは西方ではアウグスティヌス、東方ではヨハネス・クリュソストモスなどに代表される「教父」と称される代表的なキリスト教著作家(日本で言えば空海、最澄にあたるといえばわかりやすいでしょうか)の史料分析を中心に、広くキリスト教確立期(3-8世紀)の神学、歴史、文学、美術、考古学などの研究成果を発表する場となっています。近年ではジェンダー史的な見直しも進んでいます。
私はこの大会の最終日9日に、5世紀のビザンツ皇妃エウドキアの作品とされる『ホメロス風聖書物語』(Homerocentones)をテーマに研究発表しました。
これは古代ギリシアの詩人ホメロスの叙事詩『イリアス』と『オデュッセイア』の詩句を引用したうえでシャッフルし、全く別の聖書物語に書き直したものですが、彼女は『源氏物語』のおよそ600年前に成し遂げています。また、わが子イエスの亡骸を抱いて嘆く聖母のエピソードを有名なミケランジェロのピエタ像に1000年先んじて詳述しています。
伝統的な古代史や教会史の枠組みから外れ、ようやく最近脚光を浴び始めたこの作品のなかに、私は楽園追放から救済に至る女性の旅の物語が埋め込まれていると考えて研究発表してきました。女性登場人物がもとのホメロス叙事詩や聖書以上にアクティヴに発言・行動するところに近年の研究の注目が集まっていますが、私はこれに加えて彼女たちを結ぶ神の子(イエスに相当)も男性ではあるが、彼女の作中人物であるかぎり彼女の願望を投影したものとして読み解きました。
聴衆は多くはありませんでしたが、関心を寄せて後で話しかけたりメールをくださったりする方もあり、確かな手ごたえを感じました。
今回、学会以上に苦労したのはお宿と食事、それに洗濯です。しかし、こちらに知人がいたのが救いで、とくにコーパス・クリスティ・カレッジのニール・マクリン博士とそのお連れ合い富佐さんにはお世話になりました。この場を借りてお礼申し上げますとともに、お世話になるばかりでなく、こちらもなにかお力になることがあればと願っています。
2024年8月19日 記す。