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歴史フォーラム
FORUM

最終結果
REPORT

11月25日(土)、26日(日)に優秀賞受賞者を奈良大学に招待し、フォーラムを開催。25日(土)には4校4人の高校生と引率の教員が来校、またオンラインで1校4人の高校生に参加いただき、研究発表/特別講演/表彰を行いました。会場エントランスでは、佳作に選ばれたレポートのポスターを掲示しました。
研究発表では、優秀賞の生徒たちがそれぞれの研究についていきいきと発表し、素晴らしい成果発表の場となりました。最終審査の結果、学長賞、知事賞が決定しました。

最終結果

学長賞

昌平中学・高等学校

馬塚 敦也さん

研究タイトル

「高野の施餓鬼」信仰の広がりとその起源
~近隣都県の市区町村史から探る~

知事賞

神奈川県立足柄高等学校 歴史研究部

秋山 七海さん

研究タイトル

現代に伝わった人形芝居
―班目人形芝居の歴史―

優秀賞 研究発表

※高等学校等コード順に掲載

埼玉県立川口北高等学校

大津 正彦さん

研究タイトル

川口市の縄文人は泥炭から土器を作ったのか

講評

本研究は、縄文土器の復元を目的とした実験研究である。川口市の特徴的な土壌である泥炭に着目し、川口市内で出土する黒色の胎土を有する縄文土器について、泥炭を原料にしたのではないかという仮説を立て、復元実験を行っている。実験に使用した土壌が実際に泥炭かどうかの検証が課題となっている点など、実験には粗削りな部分がある印象は否めないが、複数の条件での比較検討や、実体顕微鏡を使った詳細観察など、理にかなった調査も行われている。何より、思っていた結果が出なくとも、めげずに何度もチャレンジを繰り返す姿勢は、研究を前進させる原動力として非常に重要なものであると評価できる。今回明らかになった課題に基づき、より精度の高い研究に昇華されることを期待する。

昌平中学・高等学校

馬塚 敦也さん

研究タイトル

「高野の施餓鬼」信仰の広がりとその起源
~近隣都県の市区町村史から探る~

講評

発表者は、学校が所在する埼玉県北葛飾郡杉戸町の永福寺で毎年夏に行われる「高野の施餓鬼」行事が、自宅周辺(東京都足立区)においても伝承されていることに気づいた驚きを出発点に、周辺市区町村の自治体史を博捜して「高野の施餓鬼」伝承の有無を網羅的に把握した結果、かつてはその分布が旧利根川(古利根川)とその下流及び東側の自治体に限られることを突き止めた。そしてそれが江戸時代初期以前の旧下総国の範囲と一致することを明らかにし、行事の起源が中世に遡ることを論証した。その上で、現在の「高野の施餓鬼」の参詣者がそうした分布を超えて広がることにも着眼し、近代期の東武鉄道開業と観光開発が背景にあることも明らかにした。地域のたどった重層的な歴史を立体的に再構築した研究成果は、堅実かつ新規性があり、高く評価できる。

神奈川県立足柄高等学校

神奈川県立歴史研究部

米澤 檜さん

研究タイトル

関東大震災下の箱根地域の被害と復旧
―残された史料・石碑から読み解く―

講評

本研究は、祖母の家で偶然見つけた高祖父の記事をきっかけに、班目人形芝居の歴史や現在も活動を続ける相模人形芝居足柄座について調べている。先行研究を綿密に調べることで歴史を詳細に分析しただけではなく、現在の人形芝居を実際にフィールドワークすることによって、足柄座の現状や後継者問題にも触れている点は大きく評価できる。歴史学や民俗学、文化人類学など、学祭的な研究テーマとして興味深い。さらに、江戸時代から続く人形芝居の歴史が戦争などで中断される経緯を説明しながら、それでも地域で伝承されている文化として人形芝居を取り上げることによって、人の記憶に残る文化のあり方について考えさせる。身近なことから歴史を掘り下げ、現在の地域文化を見直す優れた研究だといえる。

神奈川県立足柄高等学校

神奈川県立歴史研究部

秋山 七海さん

研究タイトル

現代に伝わった人形芝居
―班目人形芝居の歴史―

講評

本研究は、関東大震災によって影響を受けた箱根を対象地域として、被害地図による被害範囲、温泉村役場の宿直日誌から被害や震災後の状況、また神奈川県に対する上申書などから復旧・復興の過程を読み解き、考えられる疑問点を現地での聞き取りや文書以外の資料収集によって解決していくユニークで魅了される内容となっている。地元側から復興を進めていく経緯がわかる報告としても興味深い。今後の観光地箱根ならではの自然災害について、その備えを考えるきっかけとなる成果であろう。

岐阜県立関高等学校

関高等学校地域研究部

杉浦 良太朗さん・鈴木 遥斗さん・梅村 颯太朗さん・酒向 達也さん

研究タイトル

地下軍需工場建設と本土決戦準備
~東海軍管区の本土決戦構想を探る~

講評

第2次大戦末期の地下軍需工場について、資料調査、遺跡の調査、聞き取りなど多様な観点から探究している。高評価のポイントとしては、①2022年に行った「秘匿飛行場」調査の継続性の上に成立している点、②地下軍需工場で働いていた中国人労働者についての公的な資料に対して、実態はどうだったのかと疑問を抱き、資料調査や聞き取り調査を行った点、③文献、聞き取り調査などから得られた情報から、地下軍需工場が岐阜県に集中した理由、さらに推測としながらも本土決戦に備えた最終防衛線と東濃の地下工場の関係を地理的要因から考察している点が挙げられる。多様な調査方法、資料に対する向き合い方、そして、得られた情報を統合する意欲が感じられる研究である。 また、現地セミナーを開催し、調査結果を地域の方々に還元している姿も印象に残った。これからも、歴史研究を〈今〉に活かす活動を続けられることを期待したい。