TOP

史学科のトピックス
TOPICS

【教員の研究活動】奈良大学文学部史学科の足立広明先生(西洋史)が国際学会(国際ビザンツ学会)にて研究報告をされました。続編です。

さて、なぜウィーンでビザンツ学会かということで長文になってしましまいました。学会本体と自分の発表について簡単に記しておきます。

 あらためてですが、第25回国際ビザンツ学会(25th International Congress of Byzantine Studies)はByzantium beyond Byzantium(ビザンツを超えたビザンツ)をテーマに8月24日から29日まで平日1週間にわたってウィーン大学で開催されました。テーマにある「ビザンツを超えたビザンツ」とは、狭義には帝国滅亡後も継承されるビザンツ文化ということで、東方正教圏の東欧バルカン諸国の文化史ということになるかと思いますが、ここではより広く西欧はじめ世界の近現代の歴史学のなかでビザンツ史がどのように扱われてきたか、それは今後どのような可能性があるのかがメインテーマとなり、オーストリアをはじめ中欧諸国におけるビザンツ史の在り方はもちろん、日本の佐藤双葉さん原作のマンガ『アンナ・コムネナ』など各国のマンガやドラマなども幅広いビザンツ受容の歴史として取り上げられていました。インドや中国に至る広いユーラシアの視点の中で見たビザンツ史も大きなテーマで、少し前からそうなってきていましたが、今回我々日本人研究者よりも中国人の若い研究者が数多くやってきていたことが目を引きました。

 私よりひと世代上の先生方がご存命の最後のころは、ちょうど社会主義イデオロギーによる図式的な歴史理解崩壊の時代で、「ビザンツ封建制論争」などが行き詰って議論されなくなっていく渦中にあり、大きな理念や枠組みが語られなくなる一方、細かな実証的研究の数ばかりが増えて、学会の規模だけ大きくなっても全体の意義を見失っているのではないかという厳しい意見もありました。しかし、今回久方ぶりに参加してみて感じたのは、どの部会にも希望があって光っているということでした。部会の数が多くなりすぎて全部聞くことができないのは確かにもったいないかぎりですが、しかしプログラムを見てそれをもったいないと思えるテーマがたくさんあるということに可能性を感じました。それらのテーマの多くは古い伝統的な枠組みが強固な時代にはなかった新しい問いを持つものです。

 たとえば、私が参加していたジェンダー史関係の部会がそれで、昔は学問というのは歴史学に限らず、また政治の右左に関係なく、高度な学識を身に着けた年長男性の学者が権威を持って語るものという時代が長く続きましたが(ウィーン大学の中庭側廊にもずらりといかめしい顔で前世紀の偉大な男性教授像が並んでいる)、今は年齢や地位に関係なく、とくにジェンダー史部門では女性が先導してそれに男性研究者が応答するという形で新しい視点が次々と切り開かれているように思えます。

 私が発表したのは、『奈良史学』でも扱った皇妃エウドキア作の『殉教者キュプリアノス伝』で、男性登場人物の魔術師キュプリアノスの人生に女性作者エウドキアのエージェンシー(選択的主体)が投影されているのではないかというものでした。海外に向けてこの題材で発信するのは初めてであり、それなりの意義はあったと思っていますが、どの程度理解されたかについては自信はありません。発表後プレゼンター三人が並んで行う質疑応答にも参加し、一定の貢献はできたかに思っています。DSC_0640.JPGDSC_0639.JPG

 補足です。質疑応答での英語はもっと当意即妙にすらすら言えるようになりたいと思いました。プレゼン原稿は何度も練習したので、本番は自分が思う以上になめらかに口が動いてくれてよかったのですが、あとの質疑はそう簡単ではありません。参加者の名前一覧を見るとビザンツ学会だけあって英語ネイティヴはむしろ少なく、東欧系も多いのに、みんな臆せずきれいな英語で話します。イタリア系の方などは上手とは言えないが、質問されると5分ぐらい早口でまくし立てて圧倒する。このぐらいでないと国際的には通用しないのでしょう。ビザンツ学会は、以前は英語発表は4割ぐらいでフランス語やドイツ語、イタリア語、それにロシア語などのスラブ語で発表の方もいましたが、今はウィーンなのにドイツ語圏研究者はみんな英語で、一部フランス語圏研究者がフランス語で発表するほかは大体英語でした。最後のフィナーレの発表は女性イタリア人研究者がイタリア語で締めましたが、この方も英語原稿はパワポで提示していました。いろいろ意見もあるでしょうが、東洋からの外国人的には英語の比重が多いほうがラクであることは確かです。

20260829_182324.jpg

アーカイブ
ARCHIVE

関連記事
RELATED ARTICLES