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【教員の研究活動】奈良大学文学部史学科の足立広明先生(西洋古代中世史)が、第76回日本西洋史学会大会(2026年5月16・17日:日本女子大学開催)で研究発表しました。

史学科の足立広明先生(西洋古代中世史)が, 第76回日本西洋史学会大会(2026年5月16・17日:日本女子大学開催)で、二日目17日に古代史部会で以下の題目・内容で研究発表しました。学会全体でもジェンダーとバックラッシュが初日シンポジウムで近現代を中心に取り上げられましたが、現代に至る西洋のジェンダー観の構築される大きな変換の時代である古代末期における男性観の変容について話しました。

以下概要です。

                                      

第76回西洋史学会大会 自由論題報告

題目 古代末期における男らしさの変容について ―マルクス・アウレリウス、ユリアヌス、聖アントニオスの比較を中心に

ビザンツ帝国を訪れた十字軍兵士や教皇使節リュウトプラントなどの西欧人が、こぞってビザンツ人の狡猾さと臆病さを非難したことはよく知られている。しかし、このステレオタイプの偏見がジェンダー規範にかかわるものであることは、ようやく最近目が向けられ始めたばかりである(Leonora Neville, Byzantine Gender, 2019)。騎士社会成立後の西欧男性の目には、ビザンツ男性は「男らしく」なかったのである。しかし、ビザンツ男性は彼らとは別のモラルを古代末期のローマ帝国から継承していた。本発表は、この古代末期「男らしさ」の変容について検討を試みるものである。  アウグストゥス帝以来の「ローマの平和」のなかで、戦場の武勲で「男らしさ」を誇示する機会は激減した。それに代わって、公共の場で節度ある態度を示すことが模範となった。五賢帝最後のマルクス・アウレリウス帝はその典型と言える。彼が本当にそうであったかはわからないが、ユリアヌス帝などによって彼は後期帝政時代に寛容・忍耐・節度を兼ね備えた理想的皇帝として称賛されるようになる。一方、古代末期になるとキリスト教の台頭によってもう一つの理想像が示される。それは地位や財産はもちろん、肉体的強さも含めてかつてのローマ男性の世俗的価値を放棄することで「男らしさ」を示す修道士が登場したことである。彼らは霊的戦場の兵士としてローマのモラルを逆説的に継承する。その例として聖アントニオスが挙げられるだろう(Mathew Kuefler, Manly Eunuchs, 2001; Mark Masterson, Man to man, 2014)。しかし、ユダ、ペテロ、それにイエス自身も含む福音書男性の物語は、霊的側面も含め神の前で男性的強さが剝ぎ取られ、その弱さが強調されていく物語になっているとも考えられる。そのような物語がなぜ生じ、どこへ継承されていったのか、矛盾と可変性に満ちた古代末期の男性的ジェンダー規範の振幅の大きさにまずは目を凝らしたい。

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