奈良大学教養部助教授
岩崎敬二
(動物生態学・生物保全学:
海や川の生物 たちの食う〜食われる・競争・共生関係の研究と自然保護)
獲れたての新鮮な太刀魚(タチウオ)の体の表面は、グアニン箔(はく)という薄い銀色の膜に被われています。タチウオには、普通の魚のような硬い鱗(うろこ)はなく、このグアニン箔が体全体を被うことで、体を保護しています。そのために、タチウオは銀白色に輝いて見えるわけです。このグアニン箔は、人間が触っただけでもすぐ取れてしまい、指にくっついてきます。一度、是非、タチウオに触って確かめてみて下さい。これほどに弱く体に付着していますが、次々に再生されるために、タチウオが生きている限り、はげてしまうことはないようです。
さて、マニキュア(mani [「指」という意味です]−cure [「保護・直す」という意味です]
ですので、正確にはマニキュアですね)の中に入っている「ラメ」についてですが、茂見さんの質問で、タチウオが使われていることを私は初めて知りました。そのため、その作り方を、私は詳しくは知りません。しかし、「偽物の真珠」の作り方は知っていますので、その秘伝をお教えします。
タチウオの体の表面にあるグアニン箔は、偽物の真珠(模造真珠)を作る際の材料として、大変に有名です。本物の真珠は、アコヤガイという貝によって長い時間をかけて作りあげられるものですので、なかなかに高価です。そこで、簡単にできる安い真珠が作られています。その模造真珠の作り方にも色々あるのですが、その代表的な
ものが、タチウオのグアニン箔を使うものです。
<秘伝:タチウオから真珠を作る!方法>
1)まず、獲れたての新鮮な太刀魚の体をこすって、グアニン箔をこそげ落とします。
2)それを乾燥させます。
3)下敷きなどの原料であるセルロイドを熱して溶かしたものを用意します。
4)そのセルロイドの液体に、乾燥したグアニン箔を混ぜ合わせます。
5)その液体を、ガラス玉に塗り付けて、冷まします。
6)これで、模造真珠のできあがりです。
そこで、茂見さんの質問に戻ります。おそらく、マニキュアの中に入っている「ラメ」も、上の1)と2)のようにして取っているのでしょう。物が腐る時には、「水分」が必ず必要です。「腐る」ということは、バクテリア(細菌)という生き物が栄養分を取り込むために、物を変質させる現象で、そのバクテリアが生きるためには、水分が不可欠です。乾燥させてしっかり水分を取れば、バクテリアが増えることはありませんので、物が腐ることはありません。魚の干物が長持ちするのも、このためです。さらに、模造真珠では、セルロイドという、水分を一切含まないものにまぜあわせますので、長くそのままの美しさを保てるわけです。
マニキュアの成分も、油に溶けるセルロイドのような物質ですので、水は一切入っていません。そのために、乾燥させて細かく砕いたグアニン箔も腐ることがないので しょう。
かつて、「ラメ」は、金や銀という貴金属を薄く延ばして砕いたものから作られていました。しかし、それではあまりに高価であるために、現在では、金銀以外の様々な物質から作られています。それにしても、マニキュアの中に入っている「ラメ」も
、タチウオのグアニン箔でできているとは知りませんでした。私もとても勉強になり
ました。どうもありがとう。
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