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2021/05/27
インタビュー
今年度ご着任教授の紹介 ② 與久田 巌 教授
與久田巌 教授 専門 社会心理学、産業・組織心理学
プロフィール
沖縄県出身。関西大学大学院社会学研究科博士後期課程社会心理学専攻単位取得退学。修士(心理学)。
児童相談所心理判定員、専門学校・短期大学・四年制大学・大学院などの非常勤講師、大阪夕陽丘学園短期大学の助教、准教授、教授などを経て2021年4月奈良大学に着任。専門は産業・組織心理学。臨床心理士・公認心理師、心理臨床の実務経験もある。
與久田先生からのメッセージ
夢
幼い頃から野球をやっていた私は、甲子園に出ることが夢でした。全県から集まってきた部員は、“レベルを超えてラベルが違う”センスのよい輩ばかりで、自分のセンスのなさに劣等感を抱きつつ練習に励んでいました。高3になる時、このままでは野球も勉強も中途半端になる、と甲子園の夢を諦め、高校野球の監督として甲子園に出場することへと夢をかえ、勉強に励みました。
とある試験
残念ながら浪人した私は、大学進学を目指して予備校に通っていました。その年末の模擬試験でのこと。当時、文章が三行も四行も続く一文は“悪文”と教わっていましたが、現代文の1つがまさに悪文の典型で読解に苦労しました。しかし、それよりもなによりも、書いてある内容が自分のことを言い当てられているようで、心臓がバクバクして問題を解くどころではありませんでした。
試験後、筆者を調べると心理学者でした。
未だ自分が知らない自分のなかにある何か、その何かを言い当てられたかのような、あの文章、そして、そういったことを研究しているらしい心理学、その心理学とやらを学びたい! 急転直下、心理学を志したのでした。
乗り越えられたのか
模擬試験に出た文章の出典本を買いましたが難解で読み進められず、大学生活が始まり、そのうち忘れていました。修士課程の院生になっていたある日、ふと思い出し、付箋のついた出典部分を読み返していました。スラスラと読み終え、内容を充分に理解でき、一文が何行にもわたるのも無理ないなと思えました。私は、そんな簡単なことが書いてあったのかと思うと同時に、心理学の知識が身についていることを嬉しくも思った記憶があります。
さて。では、私はあの頃の自分を乗り越えられたのでしょうか。それはわかりません。ですが、少なくとも、あの頃よりも多様なもののみかた、考えかた、行動ができるようになりました。
研究スタイルと研究テーマ
研究を始めた頃は先行研究に基づいて仮説を設定し、推測統計に基づいた検定を行うスタイルでした。その後、“全員調査すれば推測統計はいらない”と、今までの私の研究スタイルを“ちゃぶ台返し”する刺激的な先生、そしてフィールド・ワークを“野良仕事”と訳する粋な先生に出会いました。その先生たちの影響を受け、研究スタイルをがらりと変え、現地に足を運び、ともに活動するなかから課題を見いだし、仮説を生成する研究スタイルを学びました。そのようななか、研究テーマは社会心理学的なテーマから臨床心理学的なテーマにも広がっていきました。
現在の研究と今後
近年はTFT(Thought Field Therapy:思考場療法)の有効性の実証に向けた検討を行っています。TFTは心身の問題について考えながら、身体の“ツボ”をトントンとタッピングして問題を改善するユニークな技法ですが、エビデンスが充分にあるとはいえない現況です。そこで、心理尺度のみならず、生体情報に基づいた有効性の検討を行っています。今後もそれを行いつつ、働く人のストレス・マネジメントへの活用、復職支援やEAP(従業員支援)プログラムへの組み込みなど、実践的研究を行っていきます。
最近は滞っていますが、援助要請の授受と精神的健康との関連、関西定住の沖縄・奄美地域出身者の社会心理学的な適応も研究テーマです。
心理学に興味がある高校生へ
私のライフ・ストーリーを書きましたが、読んでいて何かしら“胸の中にて鳴る音あり”の人もいたでしょう。そう、そこのあなた! ぜひ奈良大学社会学部心理学科を目指してください。
本学科は現実の社会問題の解決に向けた研究を行うことを共有している先生方です。そのような環境のもとで、ともに学び、研究し、実践していきましょう。
お待ちしています!