美し記

奈良大学

文化財学科

  • 縄文・弥生・古墳時代の衣装と化粧を再現
  • 『源氏物語』の中の女性たち-平安絵巻から現代のマンガまで-

縄文・弥生・古墳時代の衣装と化粧を再現

縄文・弥生・古墳時代の「美」について研究をしていくにあたって、まず研究対象にしたのは古墳時代の埴輪です。その中でも衣服の形状や柄がユニークで当時の巫女を象った群馬県立歴史博物館保管の「椅子に腰掛ける女子埴輪」などを調べていくことにしました。

襷(たすき)を着用していて三角の文様が付けられています。これは蛇の鱗(うろこ)に起源する文様で魔除けの意味があったらしいです。
先史時代の衣服といえば麻など素材の色そのままで、柄は描かれていないものを想像していましたが、実際に埴輪を調べてみると派手な文様や色使いをしていることがわかって面白かったです。衣装制作では当時も使われていた麻を素材に選んで作成することにしました。

参考にした埴輪だけでなく、他の埴輪でも染色や幾何学模様の柄が施されていて地味な印象の古墳時代も実際は華やかな装いをしていたことが想像できます。

このチームでは実際に衣装を再現し製作してみたのですが、できあがってみると現代の感覚でもさほど違和感はなく、オシャレな仕上がりになったと思います。
巫女の服ということもあり、清潔感のあるとても綺麗な衣装に仕上がりました。

髪型もかなり特徴的で今で言うリーゼントのような髪型をしています。
長い髪を前に持ってきて、二つに折り曲げるようにして結っており、同じような髪型をしている埴輪が他にも見つかっています。

顔にはメイクが施されていてベンガラの染料で赤いペイントをしているのが特徴的です。特に目の下に太い線を引くのが特徴で、これはマムシの目につく黒い文様に由来するらしいです。他には、目の周りを全体的に赤くしている場合もあり、メイクに関しては他の時代と比べても独特で、現代とは大きく異なる美意識であったと予想できます。

「美し記」の映像では、衣装はよりインパクトのある縄文時代の衣装で撮影することにしました。黒に赤のステッチが印象的ですが、実際に千葉市の内野第1遺跡からは、赤色に染められた紐や黒い衣服の破片が見つかっています。
縄文時代からすでに女性がオシャレをするという風習は根付いていたのだと思います。アクセサリーとして、翡翠(ひすい)の勾玉やガラス製の青い玉を使ったネックレスやイヤリングも発見されているのには驚きました。

先史時代の美のミックスとして、衣装は縄文のものを、ヘアメイクは古墳時代を意識したもので映像は制作しました。鏡のボックスに入り、現代の女性が最初にタイムスリップするのがこの時代ということもあり、もっとも意外性のある衣装やヘアメイクを採用し、映像に驚きを与えることができたと思います。

プロジェクトメンバー

  • 青木 祐希(アオキ ユウキ)
  • 今井 遥(イマイ ハルカ)
  • 萱原 朋奈(カヤハラ トモナ)
  • 木ノ内 瞭(キノウチ リョウ)
  • 郷原 麻鈴(ゴウハラ マリン)
  • 榊原 夏菜(サカキバラ カナ)
  • 新里 遥(ニイザト ハルカ)
  • 松森 多恵(マツモリ タエ)

『源氏物語』の中の女性たち-平安絵巻から現代のマンガまで-

平安女性の美しさを研究するために選んだ題材は平安時代を代表する文学作品の「源氏物語」です。奈良大学では、徳川美術館と五島美術館が所蔵する「源氏物語絵巻」の複製や「源氏物語図屏風」、「源氏物語歌留多(かるた)」などを所蔵していて「源氏物語」の世界観がビジュアルでわかるため研究の対象にはピッタリでした。

チームメンバー5人で現存している絵巻や屏風、文献を手分けして調べ、平安女性の美しさの基準がどこにあったのかまとめることにしました。

平安女性の一番の特徴といってもいいのが髪型です。
艶々でしっとりとした黒髪ロングストレートは、どんな作品にも共通して描かれており髪の長さは当時の女性の平均身長が140cm前後だったことから175cm-200cm程度あったと推測されます。センター分けでそのまま垂らす髪型が一般的で、TV等で平安時代の再現をすると髪を結ったり、ボリュームを出すような髪型にすることが多いですが、これは江戸時代以降に流行した髪型ということもわかりました。

ベースメイクは「白きもの」という表現が源氏物語にあり、白粉を水で溶き、顔全体に塗り重ね極限まで白く厚塗りしているのがわかります。とにかく白さが命で、白ければ白いほど美しいとされた時代は他の時代と比べても特出していたのではないでしょうか。当時は灯りも暗かったため、白くすることで顔を認識してもらう効果もあったようです。白粉には水銀や鉛が主成分だったため金属中毒で病を発祥する人も少なくなかったことがわかっており、より高貴な男性と結婚できるかどうかが一家の存続に関わった時代では、メイクも命がけだったのかもしれません。

眉は自身の眉を抜き、本来の眉の位置より少し高めの位置に眉墨で太めの眉を描いていました。これを「引き眉」と呼んでいたらしいです。

成人女性や既婚女性は、口腔の美容と健康の維持のために黒い染料を歯に塗りつけ、歯を黒くするお歯黒を行っていました。

衣装はもちろん十二単。「源氏物語図屏風」を見ても色使いは大胆で赤や青を組み合わせたり、緑を入れたりと、単純に同系色で合わせるということでも無かったことがわかりました。

これだけ特徴的なヘアメイクが美しいとされていた時代は他の時代には無いだろうなというのが率直な感想です。「美し記」の映像では、TVドラマなどでは控えめに表現することの多い平安貴族の特徴を当時に近いかたちで再現できたと思います。

しっとりと垂れた長い黒髪、白粉の厚塗りや引き眉、十二単も実際に十二枚を重ね色使いも当時に近いものとしました。
お歯黒だけはあまりに衝撃が大きいので割愛しましたが、源氏物語の世界から飛び出してきたかのような仕上がりになったと思います。

プロジェクトメンバー

  • 大村 彩喜子(オオムラ サキコ)
  • 加藤 優花(カトウ ユウカ)
  • 川邉 奈那子(カワベ ナナコ)
  • 冨谷 ちひろ(トミヤ チヒロ)
  • 日根野 綾香(ヒネノ アヤカ)