対象者別メニュー

ACADEMIC

学部・大学院

心理学科からのお知らせ

2019/06/12

日常風景

心理学に関心のあるあなたに。次の問いに答えられますか?

Q1 ダイエットがうまくいかないのはなぜか?

A1

 一言で言えば、思考抑制(「特定のことを考えない」ようにすること)が難しいからです。ダイエットのときには、好きな食べ物(ケーキなど)のことはできるだけ考えないように努力すると思います。しかし、私たちは「〇〇のことを考えないようにしよう!」と意識するとき、脳は意識しないうちに、おせっかいにも「〇〇のことを考えていないかな?」とチェックを始めてしまいます。好きな食べ物のことを考えないことが目標なのに、その目標を設定すると「常にそのことを考えていないかチェックしている」状態になってしまうのです。これでは、ずっと好きな食べ物のことを考えているのと変わりません。つまり、普段よりもずっと好きな食べ物を我慢することが難しい状態になってしまうのです。

 実際、社会心理学者のウェグナーの実験で、参加者に「シロクマのことを考えないでください」と指示した場合、「シロクマのことを考えてください」と指示した場合よりも、シロクマに対する反応が速くなる(シロクマに注意が向きやすい状態になる)ことが示されています。悲しいことに、食べ物に対する思考抑制も実を結ぶことはなさそうです。

 では、どうすればいのでしょうか?「ダイエットを確実に成功させる心理学テクニック」は残念ながら存在しませんが、「思考抑制よりはマシ」なやり方はわかっています。それは、代替思考(「まったく別のこと」を考えること)です。「食べ物について考えない」のではなく、趣味など別のことについて考えるように意識を向けるのです。

 

 

Q2 テスト前に掃除したくなるのはなぜか?

A2

 テストの前になると、「急に掃除をしたくなる」「本棚のマンガをどうしても読みたくなる」などのように、テスト勉強以外のこと(しかも、テスト直前以外ではたいして気にならないこと)をしたくなった経験がある人は多いのではないでしょうか。そして、誘惑に負けてしまった結果、テストの日の朝の教室で「いやあ、全然勉強できなかったよ」と、友人たちに高らかに(?)宣言するのです。

 これは、社会心理学で「セルフ・ハンディキャッピング」として知られている行動です。「セルフ・ハンディキャッピング」とは、文字通り自分に対してハンディキャップを与える行為です。では、明らかに不利になると思われる行為を、なぜしてしまうのでしょうか。

 セルフ・ハンディキャッピングは自己評価を維持するための行動のひとつと考えられています。全力で試験準備をして、それでも失敗してしまった場合、「自分には能力がない」という事実に直面することになります。一方、セルフ・ハンディキャッピングを行った場合、能力不足以外にも失敗の理由ができることになります。「つい部屋の掃除に夢中になってしまったから失敗したんだ(だから、自分の能力がないわけではない)」と考えることができるようになるわけです。少しイヤな言い方をすれば、「自分を不利な状況に置いてでも言い訳を作る」ような行動です。それだけ、人は自己評価が下がることは避けたいと考えやすいと言えます。

 ただ、問題となるのが、セルフ・ハンディキャッピングは実際に失敗の可能性を高めてしまうということです。短期的には自己評価を守れるかもしれませんが、長期的には失敗の事実だけが残りますので、良い結果にはなりません。「オレはまだ本気出してないだけ」とハンディ作りにいそしむよりも、マジメに試験勉強をしておいた方が良さそうですね。

 

Q3 ご褒美をあげるとやる気が出る?

A3

 子どもにもっと勉強してほしいとき、お手伝いをしてほしいとき、ご褒美をあげることは効果的でしょうか。心理学者のデシが大学生にパズルを用いて行った実験があります。パズルを解いていた大学生2グループの内、1つのグループには解いた数だけお金を与えるようにしました。その後、報酬とは関係なくパズルを解いてもらうと、お金をもらったグループは、パズルを解く数が減ってしまったのです。つまり、パズルを解く目的が、「おもしろいから」ではなく、「お金がもらえるから」に変わってしまって、「お金がもらえないのならパズルをやらない」となってしまったのです。やる気を出してもらうときに、ご褒美は確かに役に立つことがありますが、すでに好奇心を持って取り組んでいることにご褒美をあげると、かえってやる気を失ってしまうことがあるかもしれません。

 

Q4 信じれば叶う!?

A4

 教育心理学者ローゼンタールが提唱したピグマリオン効果(教師期待効果)といわれるものがあります。ある小学校で将来の知能を予測する検査が行われ、担任の先生は、成績が上がりそうな生徒とそうでない生徒の情報を与えられました。実はこの検査は将来の知能を予測できるものではなく、先生に与えられた情報も偽の情報でした。ところが数ヶ月後、成績が上がると言われた生徒は、実際に成績が伸びたのです。これは、成績が上がると言われた生徒に対する先生の接し方が変わったためと、後のデータからわかってきました。他にも、自分の性格を○○と信じると、自分には○○な部分も△△な部分もあるのに、○○な部分にばかり注目するようになり、実際に○○な傾向が強くなるということが知られています。信じるだけで願いが叶うとは言えませんが、信じることで行動や考え方に変化が生じることはあるといえます。

一覧へ戻る

ページトップ